U-NEXTで配信中のスペイン映画『黒い箱のアリス』を観ました。
終始不穏でギョッとするサスペンスホラーで、片腕マシンガールとは全然違ったのでそんな感じの感想を書いていきます。
『黒い箱のアリス』の概要
事故で母親と右腕を失った少女の身に起きる奇妙な出来事を鮮烈な映像で描き、ジャンル系映画を多数上映するシッチェスやプチョンなどの国際ファンタスティック映画祭で評価されたスペイン製SFスリラー。父親が起こした事故で母親を亡くし、自らも右腕を失った少女アリス。それ以来、彼女は周囲に対して心を閉ざし、人間の言葉を話す装置をつけた愛犬をママと呼ぶように。ある日、森で巨大な黒い立方体に遭遇した彼女は、その中から1通の手紙を発見する。手紙にはなぜか彼女自身の筆跡で「彼らを信じないで」と書かれていた。ほどなくして、森で倒れていたという姉弟を父親が家に連れて来るが……。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2018」上映作品。
2017年製作/106分/スペイン
引用元:映画.com
原題:Black Hollow Cage
配給:クロックワークス
監督:サドラック・ゴンザレス=ペレジョン
製作:ハビエル・アグアイヨ
製作総指揮:ディエゴ・ロドリゲス
脚本:サドラック・ゴンザレス=ペレジョン
撮影:イバン・ロメロ
編集:マルタ・フェルナンデス
音楽:セルヒオ・ラミス
出演:ロウェナ・マクドネル、ジュリアン・ニコルソン、エデ・リサンデル、マーク・ピゲネル、ウィル・ハドソン、ダニエル・M・ジェイコブス
予告編はこちら↓
個人的評価:83点
ここから感想文(ネタバレ注意!)
『黒い箱のアリス』を観た僕の感想をザックリ書いていきますが、この先ネタバレにも触れるので何も情報を入れずに映画を観たいという方は、まず先に映画を観てから読んでください!
ガラス張りの大豪邸はそれだけで恐い!
映画はどこかの豪邸に何者かが忍び込むシーンから。
映画でよくあるガラス張りの豪邸。
ガラス張りってだけでもう怖いんだけど。
そして、この家の主らしきおっさんの後ろに金属バット(?)を握りしめて忍び寄る不審者。
が、なかなか襲わない。
それにしてもどういう家の構造なんだ?!
とか思いながら観ていると、ようやく主が気づき、振り向いたところを不審者が殴打。
後ろから頭カチ割るんかと思ったら、一発目は腹へ。
この時点で「なんかぬるくない?」なんてちょっと思ったんだけど、これには訳があって・・・ってのは後々判明すること。
片腕マシンガール・アリスとその家族
シーンは変わって、主人公のアリス登場。
この少女は右腕がなく、義手を初めて装着するシーン。
片腕マシンガール。
でも本人は全然嬉しくなさそう。
そしてその場にいる父親アダムは、先程不審者にぶっ殺されたオッサンぽい。
そういえばこの家もさっきの豪邸っぽい。
ということはさっきのシーンから過去に遡ったってことか。
会話の様子から父子の関係はあまり上手く行っていないよう。
そんでもってアリスに「ママ」と呼ばれる犬も同居。
この犬、超高性能なバウリンガルを装着しており、普通に会話可能。
アリスは本当に母親と接するようにこの犬と接しているので、「これは本当に母親なのか?」と思わせる。
だってそういう変わった設定の映画ってあるし、なんだかSF感もあるこの映画なら全然そういう設定もあり得るだろうと。
しかしその勘繰りは外れて、アリスがただ「ママ」と呼んでいるだけでした。
アリスの母親はどうやら死んでしまったらしく、アリス曰く父アダムのせいで死んだっぽい。
母親の死を受け入れたくなくて飼い犬をママと呼んでいるみたい。
それ以来アダムとアリスは上手く行っていないということか。
アリスが母親の死をアダムに責めるとアダム逆上。
アリスの顔面鷲掴みにしてブチギレるアダム。
これ結構ギョッとするシーン。
このオヤジ恐ろしい。
『黒い箱』登場
そんなアリスとママが山中を散歩中(どこに住んでるんだ!?)、突如目の前にデカい黒い箱が。
明らかに異物、モノリス的な。
訝しがりながらもアリスが箱に触れると、奇妙な動きをして小窓が開く。
そして中に手を突っ込むと1枚の紙切れが。
そこには、なぜかアリスの筆跡で「彼らを信じないで」と書かれている。
この段階でアリスは「未来の自分からの手紙だ!」と気づいているよう。
何て勘の良いやつなんだ!
でも「彼ら」とは?
アダムのこと?義手作ったやつのこと?
そして時を同じくして山中を散歩しているアダム。
アダムも「あるもの」を発見。
豪邸に帰ってきたアダムは、おそらくレイプされたのであろう全身傷だらけの少女とその弟を連れている。
姉はエリカ、弟はポール。
エリカ曰く、彼氏のデヴィッドにやられたらしい。
ポールの目の前で青姦されそうになったため拒否したら突然ブチギレられてボコボコにされたとか。
ちなみに弟ポールは口が聞けない。
黒い箱の一件から、「彼ら」とはこの姉弟のことであると疑いまくるアリス。
それをよそに、デヴィッドが危険だからと2人をとりあえず家で匿うことにするアダム。
エリカに対するアダムの対応から「エリカのことが好きなんでしょ!」とキレるアリス。
のちに本当にアダムがロリコンであることは判明するのだが。
未来からの警告
エリカ&ポールを匿った夜、ママが家の外で何者かの影が動くのに気づく。
アリスもそれを見る。
デヴィッドなのか?ということは、最初のシーンの不審者も多分デヴィッドなのだろう。
「誰かいる」と伝えると、包丁片手に外の様子を見に行くアダム。
めちゃくちゃ物騒で笑えるし、殺す気満々でサイコパスなアダム。
結局その日は不審者の侵入は無し。
翌日、アリスはまた黒い箱のもとへ。
また中から、今度は「4時になったらイヤホンで聞いて」と書かれた紙切れとSDカード(?)が。
指示通りに4時ちょうどにSDカードの中を聞いてみると、アリスの思った通り未来のアリスの声が!
未来アリスから姉弟を殺すように指示されるアリス。
話の内容から、この先とても悲惨なことが起こるらしく未来アリスはそれを防ごうとしているらしい。
しかも何度もいろんな方法で試しているが上手く行っていないみたい。
どうやらこの話、タイムリープものなのか?とここで気づく。
一度は指示通り殺そうと試みるも、実はアダム同様にアリスもポールに恋をしてしまっていて結局殺せずじまい。
するとその夜、ポールが家のロックを解除してデヴィッドが侵入。
アダムはエリカの色仕掛けにまんまんと引っ掛かり、エリカのケツを追っかけている隙にデヴィッドに喉元を搔っ切られて死亡。
あれ?最初のシーンと違う。
未来アリスは何度もアダムが殺されるのを防ごうとしているらしいので、殺され方も毎回違うってことか。
アダムを殺したデヴィッド、エリカ、ポールの3人はそのまま家を出て行く。
金品が目当てってことでもないのか。
ならばなぜ?
デヴィッド侵入からアダム殺害までの間、気づかずに寝ていたアリスでしたが、ようやく起きてアダムが殺されてしまったことに気づく。
そしてママも殺されている。
絶叫するアリスを真正面から延々映す、なかなか壮絶なシーン。
そして翌朝。
こんな壮絶な出来事があったのに、普通にのんきに寝ているあたりがまだまだ子供だなと思いつつも、黒い箱のもとに行くアリス。
今度は何が出てくるのかと思いきや、アリス自身が黒い箱の中に入っていくのでした。
そして絶叫。
タイムリープ発動
シーンは変わって、エリカ、デヴィッド、ポールの3人が山中にいる場面。
アダム殺害後のシーンかと思いきや、どうやら違うっぽい。
傷だらけになったエリカをアダムが発見する直前のシーン。
デヴィッドがキレてエリカをボコボコにしたのではなく、あの豪邸に入り込むための計画の内だったよう。
口裏を合わせてデヴィッドにあえてボコボコにされるエリカ。
もっと他の方法は無かったんか?!
それにしてもこのシーン、明らかに本当に殴ってるようにしか見えないんだけど、どうやって撮ってるんだろう?
本当に殴ってるのか?
ちなみにアダム殺害の前に、エリカがママを無理やり引きずってくシーンも、明らかに本当に無理矢理引きずっているので「マジか・・・」ってギョッとする。
そして、この一連のやり取りを遠巻きにスマホで撮影するアリス。
どうやら黒い箱に入ったアリスは過去に戻ったよう。
その後、夜中に「外に誰かいる」でアダムが包丁持って様子を見に行くシーンに。
外にいたのは実はアリスだったということが判明。
このあたりから色々と細かく検証してくとあきらかに辻褄が合わなかったり納得できないことが多々起きてくるが、タイムリープものはその辺目をつぶる!と決めているので気にしない!
そしてアダムが殺される当日、未来から来たアリスは過去のアリスと対面。
この辺も未来アリスがどういう意図で動いているのかよく分からない。
顔に布まくのも、あの画が欲しかっただけな気もしなくもないが。
とりあえず過去アリスを部屋に戻し、未来アリスがポールの首に包丁突き刺して殺害。
でもなぜかエリカには日和って、逆にアリスが腹を刺されて未来アリス死亡。
この辺もアリスの意図が良く分からない。
けど、引きの画で突発的な暴力が起こるのは大好きだからそれはそれで良し!
アダムが殺されたアリスを発見。
泣き叫び憔悴しきったアダムのもとに部屋に戻っていた過去アリスがやって来る。
あまりの出来事に訳が分からなくなるアダムの表情に爆笑。
呼んでも全然気づかないし。
すべてをやり直す
過去アリスはアダムに事の次第を説明。
案外あっさりすべてを受け入れるアダム。
物分かりが良い。
今度はアリスとアダムの2人で過去に戻ることに。
そしてここで映画冒頭のシーンに戻る。
アダムをぶん殴って殺したのは、実は未来から来たアダム自身だったのだ!
だからやたらと躊躇していてぬるい感じになっていたのだろう、と解釈いたします。
自分自身を殺すって、胸中お察しします。
エリカとポールは部屋に軟禁。
デヴィッドをおびき寄せます。
デヴィッドとアダムの対面。
ビビりまくっている様子のデヴィッドですが、聞いてもないのに勝手にアダムの命を狙う理由を語り始めます。
デヴィッドの両親はアダムに殺されたのだとか。
どうやら交通事故でアダムがデヴィッドの両親を殺してしまったらしい。
そしてきっとその事故でアリスの本当のママも死んでしまい、アリスは右腕を失くしてしまったのであろう。
超エモーショナルに両親の思い出を語るデヴィッド。
デヴィッドの感情が高まれば高まるほど、こっちは「あ、そんな感じの話になってくのね」とどんどん冷めて行っちゃうんですが。
なーんて思ってたら、背後から忍び寄ったアリスがデヴィッドの脳天にナイフを突き刺すという観てて一番痛いやつが来た!!
脳天にナイフを刺してまm徐々に意識を失っていくデヴィッドの横にアリスは座り、今度はアリスが両親の思い出を語り出します。
そりゃそうだよね、アリスだって母親亡くしてるんだから。
そしてみんなトム・ハンクスが好きなのね。
全てを終わらせたアリスとアダムは、次は「その日」に戻ることを決意。
そう、事故を起こしたその日に。
事故を起こす日の朝に戻って、アリスに車のカギを捨てさせるのです。
ちょっと待って、アリスそれできるなら最初からその日に戻ってれば・・・
なんてことは考えないようにしよう!
そしてアリスは「その日」に戻るため再度、黒い箱に入るのでした。
ってとこでエンドロール!
終わり方の切れ味は超イイ!!
総評
全編通して不穏な空気が漂ってんのがタマランのです!
そして突然起こるギョッとするような暴力。
ありそうで無さそうで、でもやっぱりあったような気もする斬新な細かいもろもろの設定(高性能バウリンガルとか)もフレッシュで良かったです。
辻褄が合わないところや、気になるところはたくさんあるけど、それを気にしなければ超楽しめます!
スペイン映画侮るなかれ!
『黒い箱のアリス』は、U-NEXTで配信中ですよ~
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