無理をしない生き方論|ベイビーわるきゅーれ評

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ベイビーわるきゅーれ 2021年新作映画
(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

2021年7月公開の映画『ベイビーわるきゅーれ』。
監督は、不謹慎なまでに容赦のない残虐描写で大学在学中からその才能が高く評価された阪元裕吾監督。25歳!!
女子高生殺し屋のちさと(髙石あかり)とまひろ(伊澤彩織)が、高校卒業とともに殺し屋家業だけではなく、大人として一般社会に適応しようと悪戦苦闘しつつも、一つの仕事をきっかけにヤクザのいざこざに巻き込まれてしまう。

 

ここから本編の内容に触れる部分もあるので、何も情報を入れずに『ベイビーわるきゅーれ』を観たい方は、先に映画を観てから読んでください。

 

 

『ベイビーわるきゅーれ』の魅力は大きく分けて2つある。

 

アクション

(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

1つはスタントパフォーマーである伊澤彩織さん演じるまひろが魅せる超絶アクション。
あまりの速さ&手数の多さに何が起きているのかよく分からない、けど凄いことが起きていることはよく分かる!
恥ずかしながら今までアクション映画の格闘シーンを感性ゼロの僕は「退屈だなぁ」なんて思いながら見ることが多かったのですが、伊澤さんのアクションに脳みそと目ん玉と心臓を同時にぶち抜かれてしまい「アクション俳優ってすげー!つえー!!カッコイイ!!!」と意識を完全に書き換えられてしまいました。
事実『ベイビーわるきゅーれ』を観て以降、アクション映画熱が高まりまくっていたので、約7年ぶりに『ザ・レイド』観たら大袈裟じゃなく7年前より100倍面白く観れました。
僕の新たな扉を開いてくれた伊澤さんには大大大感謝。

 

日常

(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

2つ目の魅力は、登場人物たちのもうそこに本当にいるとしか思えない実在感。
ちさととまひろのゆるすぎる会話や、バイトの面接、無駄にピリピリしてるバイト先の先輩、輪に入れずに死ぬほど気まずくていたたまれないメイド喫茶でのバイト、死体処理業者の田坂さんとのやけにリアルなやりとり(なにがリアルか知らないけど)、拉致られたおっさんも最高だったなぁー、などなどなどなど。
「殺し屋の日常」っていう日本で暮らす大半の人の人生とはなんも関係ない設定にも関わらず、恐らく誰もが実人生で経験してきたことと重なる部分が多く「分かるわぁ~」「こういう人いる!」と登場人物たちに共感して、思わず笑ってしまうんです。
実在感があるからこそ僕にとって、ちさとやまひろのことが自分事として、もしくは友達として愛おしくてかけがえのないものになったんだと思います。

阪元監督は過去作でも、起きてる事態は超バイオレンスなのに会話の内容は超ゆるいという、異常と日常の融合みたいなことを何度も繰り返しています。
『べー。』での殺人カップルの凄惨な殺しの後の死体処理中の会話や、『スロータージャップ』での食人サイコパス野郎が料理教室の先生さらって肉の美味しい捌き方教えてもらうシーン。前作『ある用務員』では刺客を次々と送り込み、その様子を遠巻きに眺めながらする前野朋哉とその部下の会話など、不謹慎なのにどれも本当に爆笑してしまいます。
残虐描写は容赦ない上、会話も超面白いってこれ、タランティーノじゃん!とか思ってたらパンフレットで清水崇監督がしっかり指摘してくれてました。
『ベイビーわるきゅーれ』好きな人は是非阪元監督の過去作も観てほしいです。U-NEXTで配信されてるんで興味があれば是非。
ちなみに超絶グロくて倫理的にも完全にアウトな作品(特に『スロータージャップ』)もあるのでそういうの大丈夫な人は観てください。
どれも死ぬほど面白いです。

 

無理なく生きる

(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

話を『ベイビーわるきゅーれ』に戻します。
小学生みたいな感想になりますけど、僕が『ベイビーわるきゅーれ』をここまで好きになった一番の理由は、観終わった後にめちゃくちゃ元気になるからなんです。
なんでそんなに元気になれるかって言うと「無理をしない生き方」を肯定してくれているからなんだと思います。
ブチ切れながらトラブル起こしつつもなんだかんだ上手くやってるちさと、そして殺し以外何から何まで全然ダメなまひろ。
この映画は、ダメなまひろがダメな自分を受け入れて、それを克服して前に進むのではなく、諦めて無理せず「後ろ向きに前に進む」までを超ポジティブに描いてるんです。
そしてそんなまひろのことを、理解して受け入れていつも傍にいてくれるちさとみたいな人だってちゃんといるんだってことも描いてくれています。
辛いことから逃げ出さずそれを乗り越えられる人は本当に尊敬するんだけど、世の中そんな辛い戦いに勝てる強い人間ばかりじゃないんだから。
逃げ出さないことと同じぐらい「逃げること」も生きていく上ではとても大事なことだし、自分に合ってる道を探してその道を進めばきっと良くなる、って感じにそっと背中を押してくれるんです。
『ベイビーわるきゅーれ』は僕自身も含めてすべての「勝てない側」の人間を肯定してくれている映画だと思っています。

まひろを演じた伊澤さんはインタビューで、
「『なんだか上手くできないなあ』って思ったときは、まひろみたいに『だって無理なんだもん』って声に出してみてほしい」
と、割と人生においてめちゃくちゃ大切なことを話されています。
この映画とこのメッセージにどれだけの人が救われることか。
超絶アクションができて、こういう考え方を持っている方がまひろを演じたという奇跡。
僕はこの人マジでヒーローだと思ってます。

阪元監督もTwitterで「生活を犠牲にしてまで映画作りをしてほしくない」的なことを投稿していたので(全然意味合い違ったらごめんなさい!)、この人も本当に信頼できるしマジでヒーローだと思ってます。
身を粉にして何かに打ち込むって、美しいしめちゃくちゃカッコいいし憧れるんだけど、そうじゃなくたって面白いもの、良いものは作れるってことを阪元監督には突き詰めていってほしいって心から願ってます。(実際には身を粉にしているのかもしれませんが)

 

ということで、観る人やタイミングによっては人生でとても大切な1本になり得る最高の映画だと思います。
何より単純に超面白いので多くの人に観てもらいたい。
特に、生きづらさを感じている人や、何か漠然とした不安みたいなものを抱えている人は、きっと少し心が軽くなると思います。
僕にとってもこの映画は人生の大事な心のよりどころになっていく気がします。
そして何より、阪元裕吾、髙石あかり、伊澤彩織という人たちのことを知れたことで、この先の人生がまた一つ楽しくなりそうな予感がしてなりません。
あざっす、先輩!!!

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